【ジャパニーズウイスキーレビュー】シングルモルト余市 シェリー＆スイートを評価

この記事では、余市蒸溜所のお土産ショップ限定販売「シングルモルト余市 シェリー＆スイート」について、テイスティングレビューや評価、定価・流通価格などを詳しくご紹介します。

「シングルモルト余市 シェリー＆スイート」の味わいや、背景にある余市蒸溜所の魅力を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

 

 

 

余市蒸溜所とは？

余市蒸溜所

• オーナー：ニッカウヰスキー
• 創業年：1936年
• 所在地：北海道余市郡余市町黒川町７丁目６

 

ニッカウヰスキーの聖地「重要文化財」に指定

余市蒸溜所は、日本ウイスキーの象徴的な存在であり、ニッカウヰスキーの発祥地として国内外で高い評価を受けています。2021年11月に、建造物10棟が「重要文化財」に指定されることが発表されました。今回の指定には、これまで登録有形文化財や余市町指定文化財に指定されていた「旧事務所」「蒸溜棟」「貯蔵棟」などに加え、「第二貯蔵庫」を含む計10棟が含まれています。

 

歴史と創設者「竹鶴政孝」

余市蒸溜所は1934年、竹鶴政孝によって北海道余市町に設立されました。竹鶴氏は日本で“ウイスキーの父”と呼ばれる人物で、スコットランドで学んだ本格的なウイスキー製造の技術を日本に導入しました。

余市が選ばれた理由は、その自然条件にあります。スコットランドに似た冷涼な気候、清らかな水源、そしてピート（草炭）や石炭といった製造資源が豊富であることが、竹鶴氏の理想とするウイスキーづくりに適していたのです。

余市蒸溜所は、日本海と山々に囲まれた北海道余市町に位置しており、ウイスキーの製造や熟成に最適な環境を備えています。余市川から得られる清らかな雪解け水は軟水で、ウイスキーに柔らかい口当たりをもたらします。

また、この地域の冷涼な気候は四季ごとの寒暖差を通じて、ウイスキー熟成がゆっくり進むことにより、複雑で奥深い風味を生み出します。さらに、海風や川霧によって運ばれる湿潤な気候は、ウイスキーの樽熟成に最適な湿度を提供。

これらのウイスキー造りに適した環境が、余市ならではのスモーキーで重厚な味わいを支えています。

 

石炭直火蒸溜

余市蒸溜所の最大の特徴は、世界的にも希少な「石炭直火蒸溜」を採用していることです。ポットスチル（蒸溜器）の下部に石炭を直接くべて加熱するこの方法は、管理が非常に難しい一方で、個性的なモルト原酒を生み出します。

余市のモルト原酒は、力強く重厚な味わい。スモーキーな香りと相性が良く、ヘビーピーテッドタイプのモルト原酒は余市蒸溜所の基本的なスタイル。バーボン樽の他、新樽（バージンオーク）の熟成も行い、ウッディな香りやバニラの香りを備えながらも、原酒本来の重厚さを失わないバランスの取れた味わいに仕上げています。

ポットスチルは竹鶴氏がスコットランドで学んだ、直系のストレートヘッド型を採用。下向きのラインアームを持つ設計は、重厚で濃厚な蒸留液を得るための工夫が施されています。

 

世界的評価

余市蒸溜所のウイスキーは、国際的な品評会で多くの賞を受賞しており、日本のウイスキーが世界的に認知されるきっかけを作りました。特に「ニッカ シングルカスク余市10年」が「ワールド・ウイスキー・アワード」で世界一に選ばれたことで、その品質の高さが広く知られるようになりました。

 

主なラインナップ

シングルモルト余市

フラッグシップボトル。ピート香とスモーキーさを前面に押し出しつつ、フルーティーなアロマが引き立つ一本。

シングルモルト余市10年

2022年11月にリニューアル。熟成を重ねた余市モルトならではの力強く重厚な味わい。ピーティーで燻製を思わせる風味とコク深い余韻。

シングルモルト余市 グランデ

2022年3月にリリースされた国内の空港免税向け商品。余市の特徴である力強さと厚みを、ヘビーピートモルト原酒と新樽熟成モルト原酒によってさらに引き出したウイスキー。

 

 

【ジャパニーズウイスキーレビュー】シングルモルト余市 シェリー＆スイートを評価

シングルモルト余市 シェリー＆スイート
Single Malt Yoichi Sherry & Sweet

• シングルモルトジャパニーズウイスキー
• 55％　500ml（180mlボトルも有り）
• 抜栓時期：2024年2月
• テイスティング時期：2025年5月
• whiskybaseでの評価：88.16/100
• 参考小売価格：8,500円
• 楽天市場価格[2025年5月]：16,170円
• Amazon価格[2025年5月]：14,780円

 

蒸留所限定｜シングルモルト余市 シェリー＆スイートとは？

「シングルモルト余市 シェリー＆スイート」は、余市蒸溜所内のショップでしか購入できない限定ボトルです。
一般の酒販店やBAR、ウイスキー専門店では流通しておらず、あくまで現地限定のアイテム。ただし、二次流通市場では見かけることもあります。

この「シェリー＆スイート」は、余市蒸溜所限定シリーズのひとつで、他には「ウッディ＆バニラ」や「ピーティー＆ソルティ」など、計3種類のラインナップが存在しています。

「シェリー＆スイート」は、余市のシングルモルトを構成する原酒の一部をボトリングしたもの。シェリー樽で熟成された原酒が主体となっており、その名の通り、シェリーの風味とスイートなアロマが際立っています。

現在のボトルには熟成年数の表記はありませんが、かつては「12年物」として販売されていた時期もあります。アルコール度数は55％と高めで、「カスクストレングス」の表記こそないものの、加水はほとんどされていない、原酒そのままの濃厚な仕上がりとなっています。

他の余市との比較

ボトル名	特徴	ピート感	フルーティー	樽香
ピーティ＆ソルティ	強烈なスモーキーさと塩気	★★★★★	★	★
シェリー＆スイート	ドライフルーツの甘さ	★★	★★★★★	★★★★
ウッディ＆バニラ	樽香と甘さ	★★	★★★★	★★★★★
シングルモルト余市（定番）	定番品	★★★	★★★	★★★

 

定価と価格推移

「シングルモルト余市 シェリー＆スイート」500mlボトルの販売価格は8,500円。2024年に6,800円から8,500円に値上がりしています。

2025年5月現在、「シングルモルト余市 シェリー＆スイート」は、オークション市場では7,000円〜10,000円前後で取引されています。ネットショップでは14,000円以上の価格がつくこともあり、「ウッディ＆バニラ」や「ピーティー＆ソルティ」と比べてやや高値で推移しています。

今後の販売数や供給状況は不透明ですが、希少性の高さから、今後さらに価格が上昇する可能性もあるでしょう。

「シングルモルト余市 シェリー＆スイート」オークションでの価格推移

• 2019年（定価6,800円）：11,000円前後
• 2021年（定価6,800円）：7,000～12,000円
• 2023年（定価6,800円）：6,000～10,000円
• 2024年（定価8,500円）：7,000～10,000円
• 2025年5月（定価8,500円）：7,000～10,000円

 

香り

キャラメル、レーズン、アーモンド、ドライアプリコット、ドライイチジク、オロロソシェリー、黒糖、穀物、マドレーヌ、バルサミコソース、パウンドケーキ、ヴィンテージコニャック、シナモン、メープルシロップ。甘やかでリッチなアロマ。オロロソシェリーのように豊潤な香りが長く続きます。

加水すると、チョコレート、カカオパウダー、ナツメヤシ、黒糖ラテ。

 

味わい

口当たりは刺激があってパワフル。やや尖っていますが、アルコール臭はありません。甘みがあってリッチ。若干の酸味。フルボディで濃厚。飲みごたえがあります。中盤以降もフルーティー。ドライフルーツ、オロロソシェリーの香り、アーモンドキャラメル。フィニッシュにかけても濃厚なフルーツソースのような、重厚な味わいが続きます、余韻はやや長め。

加水後するとクリーミーな味わいに変化。フィニッシュにかけては再び、シェリー樽からのニュアンスが強く表れます。

 

評価

「シングルモルト余市 シェリー＆スイート」の評価としては、「ジャパニーズNo.1シェリーカスク！とにかくリッチで濃厚、そして旨い」です。

近年、シェリー樽の需要は世界的に高まり、その希少性は年々増しています。大手であるニッカウヰスキーでさえ、シェリー樽の安定調達は容易ではないはず。だからこそ、蒸溜所限定とはいえ、余市でこのクオリティのシェリーカスクに出会えること自体が、実はとても贅沢なこと。余市のシェリーカスクが飲めることに、まず感謝したいですね。

実際に飲んでみると、「シングルモルト余市 シェリー＆スイート」の率直な感想は、シェリー樽のジャパニーズウイスキーとして、おそらく右に出るものはないと思えるくらい美味しい、ということ。完成度の高さがエグイ…。

濃密なフルーティーさと深いコク、パワフルで余韻の長い味わい。まさにシェリー樽の魅力を、ガッチガチに詰め込んだような一本。甘み・酸味・苦味のバランスも秀逸で、ドライフルーツやアーモンドの香ばしさ、黒糖・キャラメルの濃厚な甘さ、そしてヴィンテージ・コニャックを彷彿とさせる複雑で長い余韻。どこをとっても文句なしの仕上がりで、正直、悪いところが見つかりません。

シングルモルトスコッチの「シェリー樽系」銘柄と比較してみると、近い印象を受けるのはグレンドロナックです。マッカランやグレンファークラス、タムデューといったオール・シェリーカスクの名門が並ぶ中でも、特にグレンドロナックの濃厚な甘さは「シェリー＆スイート」と通じる部分があります。

グレンドロナックでは、オロロソに加えてPX（ペドロ・ヒメネス）の樽も使用されていますが、このPX由来のとろりとした甘さは、余市の濃密さと重なるように感じられます。

一方で、今回の「シェリー＆スイート」にPXシェリー樽が使用されているかどうかは、公式には明らかになっていません。おそらく使用されていないと推測しています。というのも、ニッカウヰスキーは創業者・竹鶴政孝の伝統を色濃く受け継ぐ蒸溜所であり、基本的には、スコッチで伝統的なオロロソシェリー樽を主軸としていると考えられるから。

とはいえ、過去に限定ボトルとしてリリースされた余市では、オロロソ以外のシェリー樽が使われた例もあります。今回の「シェリー＆スイート」にはPXが入っていないとしても、定番ラインナップや今後のリリースでは、そうした複数種のシェリー樽がブレンドされる可能性も十分にあるでしょう。

いずれにせよ、「シングルモルト余市 シェリー＆スイート」は、シェリー樽の魅力を全開で堪能できる、今や非常に貴重なジャパニーズウイスキーです。もちろん、他の国産シングルモルトでもシェリーカスク熟成の銘柄は存在しますが、正直いってこの余市は“別格”。真っ向から対抗できるのは、超高級ボトルとして名高い「山崎シェリーカスク（または山崎スパニッシュオーク）」くらいではないでしょうか。

この圧倒的な味わいの背景には、「余市」特有の重厚なモルト原酒の存在があります。世界でも極めて稀な「石炭直火蒸溜」によって造られるニューポットが、上質なオロロソシェリー樽に満たされ、長い熟成を経ることで、これほどまでに複雑かつ力強い風味を生み出しているのです。

ウイスキーにおいて樽の影響は非常に大きなものですが、それを受け止めるニューポットの質が伴ってこそ、シェリー樽熟成の良さが真に引き出される。まさに、余市がそれを体現した一本だといえるでしょう。

 

最後に、「余市らしさ」という観点にも触れておきましょう。

「シングルモルト余市 シェリー＆スイート」は、オロロソシェリー樽由来の濃厚なアロマとリッチな甘みが主役であり、余市らしいスモーキーさはほとんど感じられません。言い換えれば、ピート香に惹かれて余市を好む方にとっては、同じ「シングルモルト余市」の名を冠していても、まったく別の銘柄に思えるかもしれません。それほどまでにシェリー樽の個性が支配的。ネガティブに言えば「余市らしくない」と感じる方もいるでしょうが、シェリー樽のウイスキーとしては、レベチな完成度です。

では「余市10年」と比べるとどうでしょうか。

ノンエイジの余市よりも、10年物にはシェリー樽熟成原酒の比率が高く感じられます。もちろん、熟成年数の違いによる丸みや深みも加味すべきですが、「シェリー＆スイート」と共通する濃厚な甘みや重厚感が垣間見えるのも事実。おそらく余市10年には、ノンエイジよりも多くのシェリー樽原酒が使われていると推測できます。

「余市」の多様な一面を知るうえでも、「シェリー＆スイート」は極めて興味深い1本です。スモーキーなピートタイプとは一線を画しつつ、ブランドの奥行きを改めて感じさせてくれる、非常に完成度の高いシングルモルトといえるでしょう。

「シングルモルト余市 シェリー＆スイート」は、希少な余市蒸溜所のシェリー樽原酒を楽しめる商品。余市蒸留所の見学に訪れた際には、真っ先にショップに向かい買うことを強くおすすめします！

 

 

 

 

「シングルモルト余市 シェリー＆スイート」は、シェリー樽熟成の魅力を存分に楽しめる、リッチで深みのある一本です。余市ならではの伝統技術とこだわりと、シェリー樽原酒の個性が詰まったこのボトルは、飲むたびに新たな発見と感動を与えてくれます。今後もますます注目が高まること間違いなしの、ジャパニーズ・シェリーカスクの代表作。

「シングルモルト余市 シェリー＆スイート」を飲みたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

 

 

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