【ジャパニーズウイスキーレビュー】イチローズモルト ダブルディスティラリーズを評価

ユースケ
ユースケ

こんばんは ユースケです。

自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!

この記事では、ジャパニーズブレンデッドモルトウイスキー「イチローズモルト ダブルディスティラリーズ」について、テイスティングレビューやボトルの評価、定価と現在の流通価格に加えて、ラベル表記の変遷やその背景まで詳しくご紹介します。

「ダブルディスティラリーズの味わいってどんな感じ?」
「実際いくらで買えるの?」
と気になっている方は、ぜひ最後までチェックしてみてください。

 

 

【ウイスキーレビュー】イチローズモルトとは?

イチローズモルトは、埼玉県秩父市に拠点を置く「ベンチャーウイスキー」が製造するウイスキーブランドです。

その洗練された味わいと革新性で国内外から高い評価を受けており、特に海外では「サントリー」、「ニッカウヰスキー」と共に、「イチローズモルト」は日本産ウイスキーブランドの代表格として、高い人気を誇っています。

 

歴史と誕生の背景

「イチローズモルト」の名前の由来となっているのが創業者の「肥土伊知郎」氏。イチローズモルトの誕生は、肥土氏の祖父が運営していた「羽生蒸溜所」は1990年代に閉鎖され、廃棄される危機にあったウイスキーの原酒を手にしたところから始まります。

肥土氏はこの原酒を受け継ぎ、「イチローズモルト」としてブランドを立ち上げます。2004年には「ベンチャーウイスキー」を設立し、2008年には「秩父蒸溜所」を稼働させることで、自身の家系に根付くウイスキー作りの伝統を守りながら、新たなウイスキー蒸溜所を稼働させ、ウイスキー造りを開始。

閉鎖した羽生蒸溜所の原酒と、秩父蒸溜所で新たに生み出された原酒を合わせることで、イチローズモルトの代表的なシリーズ「イチローズモルト リーフラベルシリーズ」を完成させます。

また、海外から原酒を輸入し、独自に調達した樽で熟成させたウイスキーと、自社のモルト原酒をあわせた「ワールドブレンデッドウイスキー」は、リーズナブルでありながら完成度が高く、多くのウイスキー愛好家に支持を受けています。

 

代表的なラインナップ

イチローズモルト リーフラベルシリーズ

「イチローズモルト リーフラベルシリーズ」は、モルト原酒100%で構成された「ブレンデッドモルトウイスキー」です。ウイスキー樽の原材料「ホワイトオーク」の「葉」をラベルデザインに採用している、イチローズモルトを代表するフラッグシップボトル。

このシリーズは、海外モルトと国産モルトを合わせた「ワールドブレンデッドモルトウイスキー」と、羽生と秩父のモルトウイスキーを合わせた「ジャパニーズブレンデッドモルトウイスキー」の2つのカテゴリーに分けられます。

ワールドブレンデッドモルトウイスキー
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ジャパニーズブレンデッドモルトウイスキー
  • イチローズモルト ダブルディスティラリーズ

 

イチローズモルト ワールドブレンデッドウイスキー

「イチローズモルト ワールドブレンデッドウイスキー」は、秩父・羽生の国産モルト原酒と、海外から輸入し、秩父蒸溜所で独自に熟成させたモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドしたシリーズ。以下の3種類が代表作。

  • イチローズモルト&グレーン ホワイトリーフ
  • イチローズモルト&グレーン クラシカルエディション
  • イチローズモルト&グレーン リミテッドエディション

 

イチローズモルト カードシリーズ

「イチローズモルト カードシリーズ」は、イチローズモルトの名を世界に広めた銘シリーズです。閉鎖した「羽生蒸留所」の原酒をボトリングした、シングルモルトジャパニーズウイスキーとなります。

ベンチャーウイスキーの代表である肥土伊知郎氏によってブランディングされ、各ボトルにはトランプのカードが1つずつ描かれています。

このシリーズには「旧 羽生蒸留所」で1985年から2000年(閉鎖年)の間に蒸留されたモルト原酒を使用しており、2006年から2014年までに合計58種類がリリースされました。

ウイスキーファンや、海外のウイスキーコレクターから熱い支持を受けている、イチローズモルトの伝説的なシリーズ。現在では1本100万円以上の値が付けられているボトルもあります。

最後に登場した「ジョーカー(カラー版)」を除く全てのボトルが、シングルカスク(一つの樽)でボトリングされています。

 

イチローズモルト 秩父(シングルモルトウイスキー秩父)

「イチローズモルト 秩父」は、秩父蒸溜所で蒸留されたシングルモルトウイスキーをボトリングしたシリーズ。

基本的に定番商品はなく、全てリミテッドエディションでリリース。秩父のシングルモルトウイスキーは生産量が少なく、その評価も高いため常に品薄状態。最も購入が難しいジャパニーズウイスキーといえるでしょう。

これまでリリースされた代表的な商品

  • 秩父 ザ・ファースト
  • 秩父 ザ・ピーテッド
  • 秩父 ザ・フロアーモルテッド
  • 秩父 ザ・ファーストテン
  • 秩父 シルヴァーオーク カスクフィニッシュ
  • 秩父 レッドワインカスク

 

 

「イチローズモルト ダブルディスティラリーズ」ラベル表記の変遷とその背景について

「イチローズモルト ダブルディスティラリーズ」には、以下3種類の異なるラベル表記ボトルが存在しています。

  • 「Pure malt whisky」表記:初期ボトル
  • 「Japanese Pure malt whisky」表記:中期ボトル
  • 「Blended malt Japanese whisky」表記:現行ボトル

「イチローズモルト ダブルディスティラリーズ」は、発売当初からこれまでラベル表記を2回変更しています。ウイスキーの中身やコンセプトに大きな変更はありません。

表記変更の背景には、近年注目を集めている「ジャパニーズウイスキーの定義」や「ウイスキー表示の国際的な整合性」があります。たとえば、「Pure Malt」という表記は一部の消費者にとって「海外原酒が含まれているのでは?」という誤解を招く可能性があるため、紛らわしさを避ける目的で使用されなくなりました。

特に、初期ボトル「Pure malt whisky」から、中期ボトル「Japanese Pure malt whisky」への変更は、他社製品との差別化や、海外原酒を一切使っていないことを明確に示す意図があったようです。

さらに、ウイスキーの本場であるスコットランドでも、「Pure Malt」の表記が使われなくなり、代わりに「Blended Malt」が主流となったこと影響し、現在の「Blended Malt Japanese Whisky」の表記へと移行されました。

とはいえ、3種類とも、秩父蒸溜所と閉鎖された羽生蒸溜所という2つの蒸溜所のモルト原酒をブレンドした、純粋なジャパニーズブレンデッドモルトウイスキーである点に変わりはなく、「イチローズモルト ダブルディスティラリーズ」の本質は販売当初から一貫していると言えます。

 

 

【ジャパニーズウイスキーレビュー】イチローズモルト ダブルディスティラリーズを評価

イチローズモルト ダブルディスティラリーズ
Ichiro’s Malt Double Distilleries

 

イチローズモルト ダブルディスティラリーズ(DD)とは?

「イチローズモルト ダブルディスティラリーズ」は、“リーフシリーズ”として人気を集めている1本です。閉鎖された羽生蒸溜所と、現在も操業を続ける秩父蒸溜所、2つのモルト原酒をブレンドしたジャパニーズブレンデッドモルトウイスキーで、その名の通り「ダブルディスティラリーズ(=二つの蒸溜所)」を意味しています。愛好家の間では、略して「DD」と呼ばれることもあります。

このボトルの中心となっているのは、主に秩父蒸溜所の原酒と見られます。というのも、羽生蒸溜所は2000年に閉鎖されており、現存する原酒の量が限られているため。

リリース初期には羽生の原酒が多く使われていた可能性がありますが、現在は2008年に創業した秩父蒸溜所の原酒が主体になっていると考えられます。

 

「ミズナラウッドリザーブ」「ワインウッドリザーブ」との違いについて

「ミズナラウッドリザーブ」と「ワインウッドリザーブ」は、海外産のモルト原酒を含む“ワールドブレンデッドモルト”ですが、「ダブルディスティラリーズ」はすべて国産のモルト原酒を使用しているため、正式に“ジャパニーズウイスキー”として分類されます。

また、「ミズナラウッドリザーブ」や「ワインウッドリザーブ」では、ブレンド後に追加熟成(マリッジ)が行われますが、「ダブルディスティラリーズ」にはこの工程がありません。

 

定価・流通価格について

「イチローズモルト ダブルディスティラリーズ」は、イチローズモルトの定番商品としては唯一の「ジャパニーズウイスキー」であり、その人気は国内外を問わず年々高まりを見せています。特に2024年の値上げ以降は、定価購入ができない状況が続いています。

現在はショップによって価格差があり、希望小売価格は税込8,800円ですが、実際の販売価格は13,000円〜16,000円ほどが一般的で、23,000円という高値での販売も確認できました。

年月 税込定価 流通価格の目安 備考
2021年4月 6,600円 約11,000円 値上がり前
2022年4月 8,800円 約15,000円 22年4月値上がり
2024年4月 8,800円 約16,000円 16,000円前後で推移
2025年5月 8,800円 約13,000~23,000円 ショップによって価格差がある

 

香り

青りんご、洋梨、ドライイチジク、ドライアプリコット、ドライマンゴー、ハチミツ、ドライフラワー、マドレーヌ、線香、アップルタルト、モルト、スイカズラ、グリーンミントキャンディー。フルーティーでスイートなアロマ。スモーキーさはありません。

加水後は、グリーンフルーツのアロマが増します。

 

味わい

甘みがあってなめらか。フルーティーで花のようにエレガント。徐々にドライに変わり、中盤から終盤にかけて、かすかにスモーキーさがあるように感じます。ミディアムボディ。

フィニッシュにかけては、バーボン樽由来のバニラや、ミズナラ樽由来のオーキーさとアジアンテイストなスパイシーさも。

加水後もフルーティーさは変わらず、エステリーさとモルティーな風味が表に現れます。

 

評価

「イチローズモルト ダブルディスティラリーズ」の評価としては、「ミズナラウッドリザーブよりもミズナラ感!ジャパニーズの中でトップクラスのクオリティ」です。

本記事で紹介している「イチローズモルト ダブルディスティラリーズ」(以下、DD)は、秩父蒸溜所と旧・羽生蒸溜所、2つの蒸溜所で造られたモルト原酒を使用しています。とはいえ、主に使われているのは秩父蒸溜所の原酒であり、羽生原酒は全体の味わいに複雑さを加えるために少量ブレンドされていると考えられます。

また、秩父蒸溜所の熟成には「バーボン樽」が最も多く使われているのが特徴です。「ミズナラ樽」のイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、ミズナラ材は非常に希少で調達が難しく、定価8,800円(税込)のボトルに多く使用するのは現実的ではありません。そのため、DDの中心となるのはバーボン樽熟成の原酒であると見て間違いないでしょう。

しかし、バーボン樽熟成ではあまり見られない、オーキーでエステリー、そしてアロマティックなスパイス感があるのも事実。これらの複雑で心地よい香りは、少量ながらブレンドされているミズナラ樽原酒による影響ではないかと考えています。

ミズナラのウイスキーで感じるアロマに「白檀」や「伽羅」といった香木の香りを表現することがありますが、DDにもそういった要素が完全にない訳ではなく、香木とまで言わないにしても、お線香のような、漢方のような、一息つくようなスパイシーさをほのかに感じます。個人的には、「むしろミズナラウッドリザーブよりもミズナラっぽいんじゃない?」と思うほど。

こうした香りや風味の要素は、他のイチローズモルトではあまり感じられない個性であり、DDならではの特徴と言えるでしょう。シリーズの中で唯一「ジャパニーズウイスキー」として定義されるDDは、その点でも特別な存在感と風格を放っています。

「イチローズモルト ダブルディスティラリーズ(DD)」の定価は8,800円(税込)ですが、現在はプレミア価格での流通が一般的となっており、コストパフォーマンスの面では、他のジャパニーズウイスキーと比べて特筆されることは少なくなっています。

しかし、もし定価で入手できるとすれば、1万円以内のジャパニーズウイスキーの中では間違いなくトップクラスのクオリティを誇ります。ブレンデッドモルトでありながら、実質的には「ほぼ秩父原酒」と言って差し支えなく、シングルモルト秩父に限りなく近い味わいを、より手頃な価格で楽しめる一本です。シングルモルト秩父に憧れつつ、価格面で手が届きにくいという方にとっては、まさに“救いの一本”と言えるでしょう。

最後に、「Pure malt whisky」、「Japanese Pure malt whisky」、「Blended malt Japanese whisky」の各ボトル(いずれも中身は同一商品)をテイスティングした感想をお伝えします。

……正直、全部同じ味です(笑)

それぞれ流通時期が異なり、わずかに原酒構成が違う可能性はあるものの、初期ボトルも現行品も味わいに大きな違いはなく、非常に安定したクオリティを保っています。この一貫した味わいこそ「ダブルディスティラリーズ」が、ベンチャーウイスキーの高度なブレンディング技術と、秩父の質の高さを物語るボトルである証だと感じました。

おすすめの飲み方は、ストレートですが、加水に対しての変化にも強いので、ロック、ハイボール、水割り、どんな飲み方でも美味しいです。ただ、それなりに希少なボトルなので、ゆっくりとストレートでテイスティングを愉しんでみてください。



 

 

「イチローズモルト ダブルディスティラリーズ」は、羽生と秩父という二つの蒸溜所の個性が織りなす、クオリティの高いジャパニーズブレンデッドモルトウイスキーです。ラベル表記の変遷からもわかるように、時代の流れや国際基準に誠実に対応しながらも、その中身と哲学は変わることなく受け継がれています。

「イチローズモルト ダブルディスティラリーズ」を飲みたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

ユースケ
ユースケ

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。

 

 

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