
こんばんは ユースケです。
自己紹介:BAR WHITE OAK 店主。ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーエキスパート。JSA認定ソムリエ。2022年1月 東京・銀座にBAR WHITE OAK をオープン。YouTube、TikTokでカクテル動画を公開中!
この記事では、スコットランド・スカイ島で造られるシングルモルトウイスキー「タリスカー10年(旧々ラベル)」のテイスティングレビューやボトルの評価に加えて、タリスカー蒸溜所の解説やオールドボトルの魅力についても詳しくご紹介します。
今回のボトルは、現行品から2つ前のボトル「旧々ラベル」となります。「タリスカー10年(旧々ラベル)」の味わいが気になる方は、ぜひ最後までご覧ください。
タリスカー蒸留所(Talisker distillery)とは?
タリスカー蒸溜所 Talisker Distillery
- 地域:スカイ島
- 創業年: 1830年
- オーナー:ディアジオ
- 蒸留器:初留釜2基、再留釜3基(合計5基)
- 年間生産量:約300万リットル
タリスカー蒸溜所は、スコットランド・スカイ島に位置する老舗の蒸溜所です。2017年にトラベイグ蒸溜所が加わるまでは、島で唯一の存在でした。
タリスカー蒸溜所は1830年、ヒュー・マカスキルとケネス・マカスキル兄弟によって設立されました。蒸溜所の名は、近隣の農地「タリスカー・ハウス」に由来しています。創業から数十年でその名声を確立し、20世紀初頭には作家ロバート・ルイス・スティーヴンソンが「王者の酒」と称賛したことでも知られています。
1928年には大きな変革があり、それまで行っていた三回蒸溜を二回蒸溜へと変更しました。また、1960年には火災によりスチルハウスを全焼するという大事件が発生しましたが、その後は同じ設計で再建され、伝統的な製法を保ち続けています。
仕込みに使用される水は、蒸溜所の背後にあるホークヒル(Cnoc nan Speireag)の清流「スプリング・カリー・バーン」から主に引かれており、非常にピュアで硬質な水質を誇ります。発酵槽(ウォッシュバック)はステンレス製で、発酵時間は約55時間。
蒸溜は、5基のポットスチル(初留2基、再留3基)を使用。スチルのネック部分がS字型に屈折しており、還流を抑えることで重厚なスピリッツが得られます。
冷却方式には伝統的なワームタブ(蛇管式冷却器)を採用しており、これがさらに複雑でオイリーな酒質を形成しています。このような設計により、スパイシーでフルボディ、かつ潮風と黒胡椒のようなアロマが一体となった、唯一無二の味わいが生まれます。
熟成には主にバーボン(アメリカンオーク)のリフィル樽が使われていますが、一部にはファーストフィルや、ポートワイン樽、オロロソシェリー樽、アモンティリャードシェリー樽での後熟も採用されています。これにより、原酒のスモーキーさや塩味に、果実味や甘みがバランスよく加わります。
熟成庫の管理方式はラック式で、湿度・温度管理のもとでスカイ島の海気を取り込んだ熟成が行われています。
タリスカー蒸溜所は、スカイ島の雄大な自然と深く結びつきながら、個性的なウイスキーを生み出し続けてきました。荒々しくも美しいその味わいは、まさに「海のシングルモルト」と呼ぶにふさわしく、ウイスキー愛好家の心を惹きつけてやみません。これからもタリスカーは、伝統と革新を併せ持ちながら、世界中にその魅力を発信し続けていくことでしょう。
タリスカーの旧ボトル・オールドボトルについて
タリスカー8年
1960年代から1980年代まで販売されていた「タリスカー8年」は、80年代中頃までは「TDラベル」と呼ばれるデザインで、2つのアルファベットが重なった紋章がラベルに描かれていました。これは、当時の経営会社であったダルユーイン・タリスカー・ディスティラーズ社(Dailuaine-Talisker Distillers)の頭文字から取られたものです。
80年代後半になるとデザインが変わり、「ストランディングマン」と呼ばれるジョニーウォーカーのキャラクターがラベルに描かれ、タリスカーがジョニーウォーカーの原酒であることを示すデザインに変更されました。
「タリスカー8年」は、はグリーンの瓶に白ラベルが貼られ、年数の「8」が赤色で強調されています。香りはフルーティーでピーティー、潮の香りや黒土のニュアンスも感じられ、若々しくドライな味わいながら奥深い余韻が特徴です。
多くのモルト愛好家から高く評価されていましたが、1990年代には姿を消し、代わりに「タリスカー10年」が登場しています。
タリスカー12年
「タリスカー12年」は、1960年代から1980年代まで流通していた12年熟成のボトル。「タリスカー8年」とほぼ同時期に販売されていました。
デザインは8年と似ており、重厚なピート香と濃厚なフルーツの香り(マンゴー、ピーチ、マスカット)が特徴です。口当たりはなめらかで、甘さとドライさのバランスが良く、8年よりも複雑で飲みごたえのある味わいを楽しめました。
タリスカー10年(旧ボトル)
マップラベル初期流通ボトル(グリーンボトル)
「マップラベル」は、1980年代後半から1990年代中頃まで流通していたボトルで、ラベルにスカイ島の地図が大きく描かれているためこの名前で呼ばれています。初期リリースのグリーンボトルは、1988年から1990年頃にかけて流通していました。現行品よりも全体的にボリュームがあり、しっかりとした個性が感じられます。
マップラベル後期流通ボトル(ブラウンボトル)
1990年頃から1990年代中頃まで流通していたブラウンカラーのマップラベル。この時期のタリスカー10年には、現在は使われていないシェリー樽原酒や長期熟成の原酒がブレンドされていたとされます。味わいはグリーンボトルと大きくは変わらず、スモーキーでフルーティーな強い個性が特徴です。
【ウイスキーレビュー】タリスカー10年(旧々ラベル)を評価
タリスカー10年(旧々ラベル)
- 45.8% 700ml
- 正規販売ボトル
- 印字:The Only Single Malt Scotch Whisky From the Isle of Skye
(スカイ島産の唯一のシングルモルトスコッチウイスキー) - 抜栓時期:2022年2月
- テイスティング時期:2025年6月
- whiskybaseでの評価:85.40/100
- 楽天市場価格[2025年6月]:在庫なし
- Amazon価格[2025年6月]:在庫なし
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タリスカー10年(旧々ラベル)とは?
「タリスカー10年(旧々ラベル)」は、現行品から数えて2世代前に流通していた定番の10年物です。
現在の現行ボトル(オレンジ色ラベル)は、2021年11月頃から市場に登場しました。それ以前は、ラベルの左側にスカイ島の地図が描かれ、「Made by the Sea」のキャッチコピーが付いた「旧ボトル」が流通していました。
今回の「旧々ラベル」は、そのさらに前に使われていたデザインです。ラベルの基本的な構成は大きく変わりませんが、スカイ島の地図が中央に配置され、上部には「The Only Single Malt Scotch Whisky From the Isle of Skye(スカイ島産の唯一のシングルモルトスコッチウイスキー)」という一文が記されています。
このデザインのボトルは、2000年代後半から2015年頃まで流通していたと見られます。クラシカルな装いは、タリスカーの伝統と歴史を今に伝える1本と言えるでしょう。
香り
アプリコット、レーズン、ドライイチジク、サクマドロップ、アップルミント、のど飴、ドライストロベリー、オレンジビターズ、アップルパイ。
加水すると、青りんご、マスカット、グラッパ、ブルーベリー、水で薄めたハチミツ、モルト。
味わい
口に含むと甘くてまろやか。徐々にピーティーでスモーキ―。ドライですっきりとした印象。ライトボディ。中盤以降はややスムース。ドライフルーツと上品な燻製の香りが続きます。余韻は中程度。
加水するとスペイサイドモルトのようなフローラルなアロマが引き立ちます。スモーキーさもありますが、やや控えめに変化。
評価
「タリスカー10年(旧々ラベル)」の評価としては、「けっこう違う!現行品よりもフルーティーで黒胡椒は控えめ」です。
このボトルはおおよそ2005〜2007年頃から2015年頃まで流通していたとされており、現在の視点から見れば10年以上前のリリース。ただし「オールドボトル(古酒)」と呼ぶにはやや大げさかもしれません。しかし、現行品と飲み比べると、その違いに驚かされます。確かに“タリスカーらしさ”は感じられるものの、まるで異なるコンセプトで造られていたかのような印象を受けます。
香りの違いは特に顕著。現行品は、スモーキーさや黒胡椒のような強いスパイス香が前面に出ており、それがタリスカーの個性として定着しています。一方、旧々ラベルはそのスパイシーさが控えめで、代わりにフルーティーな香りがはっきりと感じられます。樽香はそれほど主張しませんが、ドライフルーツを思わせるニュアンスがしっかりと漂い、より優しく、熟成感のある香り立ち。
口に含むと、現行品のタリスカー10年は、まずスモーキーでスパイシーな風味がしっかりと感じられます。その中に、ほのかなフルーティーさやオークの風味、さらに硫黄や鉄分を思わせるような個性的な要素も混ざり合い、複雑で力強いバランスを形成しています。潮気を感じるミネラル感や、オイリーで厚みのある口当たりも特徴です。
一方、旧々ラベルはというと、ノージングでは控えめだったスモーキーさが、口に含んだ瞬間にふわりと立ち上がってきます。ただし、そのスモークは現行品ほど強くはなく、燻製香もやや穏やか。タリスカーの代名詞ともいえる「黒胡椒」のようなスパイシーさも、現行品に比べるとかなり抑えめ。潮気もほんのりと感じる程度で、全体的に少し柔らかい印象を受けます。
旧々ラベルはフルーティーさが際立ちつつも、適度にスモーキーな一面も持ち合わせています。決して「クセが少なく飲みやすい」と言い切れるほどではありませんが、現行品に比べれば個性はやや穏やか。タリスカー初心者にも手に取りやすい1本かもしれません。
旧々ラベルの、海外レビューを見てみると、私のような意見も多い中にも、「ピートとペッパーの余韻が気に入っている」と言うようなコメントも書いてありました。これはおそらく、現行ボトルと飲み比べをしていないからでしょう。両者を比べれば、やはり旧々ラベルの方がスモーキ―さは控えめです。
今思うと、旧々ラベルを飲む前、久しぶりに現行品を飲んだ時にも感じました。「あれ、タリスカーって意外とピート強いな」と。思っていた以上にスモーキーさと複雑なアロマバランスを感じて、これはこれで完成度が高く感じました。
もちろん、旧々ラベルにも現行品にはない魅力があります。フルーティーさを基調に、適度なピート感が重なり合うことで、アイラモルトのような突き抜けた個性ではなく、あくまで“程よいクセ”としてのアクセントになっています。そうした意味では、極端にクセの強いアイラモルトよりも、全体のバランスに優れていると感じる人も少なくないでしょう。
最後に「現行品」と「旧々ラベル」、どちらが美味しいのか?
どちらも魅力的な1本ですが、総合的な完成度という点では、やはり現行品に軍配が上がります。ストレートはもちろん、加水やハイボールでもしっかりと個性を保つタリスカー10年の現行ボトルは、実にバランスに優れた素晴らしいウイスキーです。
「昔のほうが美味しかった」という声はウイスキーの世界ではよく耳にしますが、だからといって、現行品の価値が下がるわけではありません。むしろ、時代とともに味わいを洗練させてきた現行ボトルの進化も、しっかり評価すべきでしょう。
新旧ボトルを飲み比べてみることで、同じ「タリスカー10年」の中にある味わいの幅広さや、時代ごとの個性の違いを体験できるのも、ウイスキーの奥深い楽しみ方のひとつ。少しマニアックではありますが、自分の舌で確かめるその過程こそ、ウイスキーの世界をより面白くしてくれますね♪
「タリスカー10年(旧々ラベル)」は、現行品と比べてどこか懐かしく、フルーティーで奥行きのある味わいが楽しめる一本でした。時代とともに味わいや設計が変化していく中で、こうした旧ラベルはタリスカーの歴史や個性をより深く知る手がかりにもなりますね。
シングルモルトスコッチウイスキー「タリスカー10年(旧々ラベル)」を飲みたい方は、BARWHITEOAKで堪能してみては如何でしょうか♪

あなたの人生がウイスキーで幸せになることを願っています。最後までご覧頂きありがとうございました。それでは、また。
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